雨降りにはオーネット・コールマン

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雨は好きでも嫌いでもない。カーテンをあけて、「あっ、雨なんだな」と思うくらいだ。もちろん以前も書いたように傘が嫌いなんだけど。

子供の頃は空から水が落ちてくることを不思議に思った。舌を出して雨の味を味わい、雨が降る前の匂いを感じ、雨の冷たさからその成り立ちを想像したものだ。どこからこの水が生まれたのだろう、高い所から降ってくるのにどうして霧のように分散しないのだろうと。

でもその理屈が分かり、それに慣れると何の感動もなくなってしまって雨がつまらなくなった。大人になるというのはこういう事なのかと思う。

オーネット・コールマンというミュージシャンが昨日亡くなった。初めて彼の音楽を聴いたのはFMラジオから流れてきたThe Empty Foxhole (1966)というアルバムの中の「ZIGZAG」という曲だった。ラジオ向けとも言える短い曲だったけれど、僕にとっては無限の不思議さと楽しさを与えてくれる音楽だった。
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なんか音の並び方や区切り方が普段聴く音楽とはちがうなとは思ったけれど、その理屈を知ろうとは思わなかった。フリーなんだから理屈なんて無いのじゃないかという先入観からかもしれないが、そのままでも十分に楽しめたからなのだと思う。

オーネット・コールマンはフリージャズというジャンルで語られている人だけど、僕にとってその音楽は子供の頃に見た雨の不思議さやその神秘と何ら変わりはなく愛おしいものだ。そしてその音楽の成り立ちを知らなくてもよいと思わせてくれる希有の存在でもある。

彼の音楽の不思議さは今も失われていなくて、夜に眠りにつく前に音量を下げてアルバムを聴くと素敵な夢を見ることが出来るという効能効果がある。少なくとも僕には。 Requiescat in Pace