カトマンズに夢があるのか

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明日カトマンズに立つという友人と有楽町で会った。
いつ日本に帰るのかは未定とのこと。

台北にひとまず滞在して、そこからカトマンズに向かう。三ヶ月有効の台北ー成田往復のオープン航空券と一泊目のホテルのみ予約という段取りで出かけるという。

彼は若い頃に精神的な問題をかかえ、なかなか定職につけず数年前まで世界各地を転々と放浪していた。
もちろん海外でだってそんな彼に続けられる仕事は無かったようで、今の歳まで一年以上続けられた仕事は無かったと思う。
精神的な弱さは今も変わらず、けっして当てになる人間ではない。

でも唯一のよいところは自分の気持ちにだけは誠実な点だ。こういうことがあった。彼が高田馬場に喫茶店を開いた事がある。お金が無いので路地裏の地下という最悪の物件だ。彼は知的なサロンにしたいと夢を膨らませていたのだけれど、誰が見たってビジネスとしてはマイナスからのスタートだ。

僕は彼に「宣伝費が無いなら駅前で無料チケットでも配らないと客は来ないよ。張り紙もしよう。休みの日なら手伝ってもいい」とアドバイスをした。「分かった」と彼は言ったのだが、結果としては一度も身をもって宣伝をすることはしなかった。

案の定、一週間経っても来店するのは友人だけで一人たりとも客は来ない。どうして積極的に宣伝しないのかと聞いてみると、「そういうのは恥ずかしいので嫌だ。’SNS’に開店案内を掲載したから大丈夫」と言う。

それからも彼はまだ見ぬ客を二ヶ月ものあいだ待ち続けたが、隣のバーの酔っぱらいがトイレと間違えて訪れた以外は誰も来ないまま店はつぶれた。

僕はその時、正直「やっぱり駄目な奴だなあ」と思った。しかし、考えてみれば誰だって高田馬場の駅前でビラ配りをするのは辛い。知人に見られたら恥ずかしい。でも普通はそれを我慢してでもやるものだが彼には出来ない。そして、なけなしの開業資金数百万円を失ってしまった。

そうやってあらゆる辛いことを避けて生きて来た。いくら損をしてもだ。

今回久しぶりに会って僕が思った事は、それでもいいかもという事だった。彼は嫌なことは避け、やりたいと思った方向に行こうとする。それは百発百中で失敗するのだが、それでも世の中のルールを彼に当てはめる権利なんて僕には無いのだということだった。
そして、永遠のバックパッカーとしてこれからも青い鳥を求める旅を続けて欲しいと思う。