月を眺めながら村上作品を思い出す

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月が地球の影に隠れた様子を眺めていると、広い宇宙の片隅で起こっている細やかな現象に過ぎないのですが、そこにいる自分の存在が奇跡に恵まれたものであることを感じざるを得ません。

夢に見る不可思議な世界は、深遠な宇宙の中を自由に彷徨う自分の魂のようにも感じます。そんなぼんやりとした自覚を小説の中で見せてくれたのが村上春樹の「世界の終りとハードボイルドワンダーランド」(1985年)という小説でした。僕が一番好きな村上作品です。

先日のことですが、偶然にもパーティで「ノルウェイの森」を演奏することになった僕は、その練習(ほとんど構想)期間のほとんどを、曲の練習よりも村上の小説世界を反芻していることの方が多かったです。例えば、彼の作品を英訳している人が書いた書物などを読んでいました。

日々の生活の中では色々な刺激に反応して様々な思いが交錯します。演奏依頼(余興ですよ)をもらってからの期間は相変わらずほとんどが仕事に追われる毎日だったのですが、それでも少々は人生のことなどを考えます。そういう時に、少しだけヒントを与えてくれるのが村上作品がもたらしてくれる印象的フレーズの数々です。

別に、「こうしろ」とか「こうあるべき」なんていうのはありません。この時代の風潮であり、彼の作品の特徴でもある、おそろしく立脚点の不確かな、おそろしくポライトな、でもそれが故にとても奔放で自由なつストーリーだけなんです。こういうところを僕は気に入り、感謝さえしているのです。

まあ、そんなことを考えながら月を眺める夜です。あはは。