ペンタングルのバラッド

イメージ 1

何時出会ったのか正確には憶えていませんが、人生の夢というものがまだ形もなさないで日々悶々としていた時期だったと思います。ただ僕にはたくさんの楽しみ、音楽とか美術とか読書とかがその頃から在って、そんな方向が定まらないような日々が続いていてもたいして苦痛でもありませんでした。

友人やほんの少しの人数ですが付合った彼女たちも僕の毎日を素晴らしいものにしてくれました。そんな風にお気楽に生きて来た僕ですが、それでもちょっとは辛い事もあって、そういう時にはジャズでした。コルトレーンもエラやサラもドン・チェリーチック・コリアビル・エバンスは心の救いでした。

今から思えば明らかに人生の節目と思われることに遭遇したとき、ぼこぼこにへこんでいたわけですが、ふと深夜のFMラジオから聞こえて来たのが彼らの音楽でした。それは、熱い、優しい、抱きかかえるような、フレンドリーな、解放された、そんなジャズとは少し赴きの違うものでした。

ギターヒーローと言われていたリーダーのバートヤンシュの事は前から知っていたのですが、リードヴォーカルのジャッキーの歌声や緊張感のあるグルーブはジャズやブルースとは異質のものです。

取り上げているバラッドというのも彼らのアルバムで初めて知りました。中世の愛憎がドラマとして繰り広げられ、過剰なまでの残忍さも詩の中で語られています。怖いところがあるけど人の本質は変わっていないんだなと思わせてくれます。

ペンタングルはCD屋さんの分類ではブリティッシュフォーク、あるいはトラッドのグループです。オリジナルメンバーでは6枚のアルバムを残しています。
けっしてファンが多いとは言えないグループですが、おそらく僕が死ぬまで聴き続ける音楽のひとつだと思っています。